AGA(エージーエー)とは、日本では男性型脱毛症と訳されています。CMで一躍有名になった言葉ですが、その正式名称を知らない人も多いと思います。
AGAは、Androgenetic alopeciaの略称です。androgen(男性ホルモン)とgenetic(遺伝)のalopecia(脱毛症)という意味です。
正式名称からも分かるとおり、AGAとは男性ホルモンと遺伝からなる脱毛症です。ではなぜ、AGAはホルモンと遺伝が関係すると定義付けられたのでしょうか? ここでは、男性ホルモンと遺伝がAGAの原因とされた経緯について説明していきます。
去勢された男性は薄毛が進行しない
男性ホルモンと遺伝がなぜAGAに関係するのか? それを証明したのが、ホルモン学を専攻していたアメリカの解剖学者J・B・ハミルトンです。1942年に発表された彼の臨床実験によって、男性ホルモンと遺伝がAGAに関係することが証明されました。
実験で判明した事実が以下になります。
1.思春期前後の男性が去勢すると薄毛にならない
2.薄毛の症状がある男性が去勢されると薄毛の進行が止まる
3.薄毛の症状がある男性は、去勢後に男性ホルモンを投与されると再び薄毛が進行する
4.薄毛の症状がない男性は、去勢後に男性ホルモンを投与されても薄毛にならない
実験結果の1〜4について順に説明していきます。まずは去勢の影響を調べた1と2に関してです。
去勢とは男性の睾丸を切除することです。男性ホルモンは睾丸と副腎から分泌されますが、その多くは睾丸から分泌されます。
また、男性ホルモンは思春期頃から分泌が多くなり、その後徐々に減少していきます。下のグラフのように、睾丸から分泌される男性ホルモン(テストステロン)は、思春期頃に分泌が活発になり、急激に増えていきます。
そのため、思春期前後に去勢された男性は、男性ホルモンの分泌量が激減します。去勢後に薄毛の進行が止まることから、男性ホルモンが薄毛に関係していることが分かりました。
実は、「去勢すると薄毛にならない」という事実は、この実験が行われる以前から知られていました。古くは、古代ギリシャ時代のアリストテレスが「睾丸を切除した人には薄毛がいなかった」という記録を残しています。
しかし、その時代にはホルモンの存在は知られていませんでした。ホルモンの存在が証明されたのは1900年代始めです。そのため、1942年に発表されたハミルトンの臨床実験によって、ホルモンと薄毛の関係性が初めて証明されました。
薄毛になる人とならない人の違い
次に、実験結果3と4について解説していきます。
この実験では、去勢された後に再び男性ホルモンが投与されました。その結果、去勢前に薄毛傾向があるか、そうでないかの違いによって、男性ホルモンに反応する人としない人に別れることが判明しました。
もともと薄毛だった人は、たとえ去勢したとしても男性ホルモンの投与によって再び薄毛が進行します。一方、もともと薄毛でなかった人は、去勢後に男性ホルモンを投与されても薄毛になりませんでした。
この違いがどこからくるのか? ハミルトンはそれぞれの男性を比較し、精査しました。
その結果、男性ホルモンを投与されて薄毛になる人の家系には、AGAを発症している人の割合が多いことが分かりました。逆に、男性ホルモンを投与されても薄毛が進行しなかった人の家系には、AGAを発症している人が少なかったのです。
この違いから、AGAには男性ホルモンだけでなく、遺伝も関係していると考えられるようになりました。
私の家系は父方・母方どちらも薄毛家系で八方塞がり
では私の家系はどうなっているのか? 気になったので調べてみました。それがこちらです。
見事に父方も母方も薄毛家系です。こうしてあらためて見ると、母方の父親(私の祖父)の髪質と似ていることが認識できました。頭頂部のボリュームが出ないぺたんとした髪質で、前頭部から薄毛が始まるところなんかは、まさに祖父譲りなんだなと思いました。
遺伝的に不利でも諦めてはいけない
以上の研究から、AGA(男性型脱毛症)には男性ホルモンと遺伝が関係していることが証明されました。さらに、その後の研究によって、男性ホルモンによって薄毛になるメカニズムも分かってきました。
また、遺伝的に不利であっても、そこで諦める必要はありません。「薄毛になりやすい体質」を引き継いでいるかもしれませんが、必ずハゲるわけではないのです。
ここで諦めて対策を怠ると、それこそ薄毛が加速してしまいます。例えば、諦めて坊主にすると、そこから髪が伸びにくくなったり、薄毛が加速したりする場合もあります。
私は一時期、開き直って何も対策をしない時がありました。そうしたところ、薄毛が一気に加速し、焦ったことを覚えています。現在はさまざまな対策を講じるようになり、薄毛の進行を止めることができています。
遺伝的に不利でも諦めずに薄毛対策を続けることが大切なのです。