一般的には、子作り中にプロペシアを服用しても問題ないとされています。しかし、さまざまな情報を総合すると危険性がゼロとは言えません。
なにより、生まれてくる子供の一生に関わる問題でもあるので、子作り中の服用はオススメしません。このページでは、子作り中にプロペシアの服用をオススメしない理由を解説していきます。
男性不妊症につながる副作用がある(理由1)
プロペシアとは、フィナステリドという有効成分を含んだAGA(男性型脱毛症)治療薬です。日本で取り扱われているプロペシアには2種類あり、フィナステリドの含有量が0.2mgと1.0mgの違いがあります。
プロペシアの添付文書には、生殖器に関する副作用が書かれています。確率は低いものの、自分が発症してしまったらと思うとゾッとするものばかりです。
頻度不明 | 睾丸痛、男性不妊症・精液の質低下(精子濃度減少、無精子症、精子運動性低下、精子形態異常等) |
1~5%未満 | リビドー減退 |
1%未満 | 勃起機能不全、射精障害、精液量減少 |
「精液の質低下」や「精液量減少」は、妊娠のしやすさに影響します。「リビドー減退(性欲減退)」や「勃起機能不全」「射精障害」を発症してしまうと、子作りそのものに支障をきたします。
「精液の質低下」に関しては、自覚するのは難しいと思います。プロペシアを服用していてなかなか子供ができないと思っているのなら、精液の質が低下している可能性が考えられます。
「精液量減少」については、関連する論文がアメリカの学術誌「Fertility and sterility」にて発表されています。プロペシア服用中と中止後の精子量の変化を報告しています。論文の内容を要約すると以下のようになります。
・被験者の人数 27人
・平均治療期間 57.4ヶ月(約5年)
・平均服用量 1.04mg/日
フィナステリドの服用を中止すると、精子数は平均11.6倍に増加した。
なお、精子の運動性や形態に変化はなかった。
出典:Fertility and sterility 2013.Vol.100.p.1542
精子数は、プロペシア服用中に比べ、中止した後のほうが11.6倍も多くなっています。それだけプロペシアを服用すると精子量が減少するということです。
また、論文の結果と同じように、プロペシアの添付文書にも「服用を中止すれば回復する」とあります。しかし、一方では中止しても回復しないという報告もあるため、一概に中止すれば大丈夫ともいえません。
「リビドー減退」「勃起機能不全」「射精障害」に関しては、プロペシアの服用を止めたとしても続く場合があります。これらの症状を総称して、ポストフィナステリド症候群といいます。
ポストフィナステリド症候群には不可逆性があることが報告されています。不可逆性とは「元に戻らない」という意味です。つまり、「リビドー減退」「勃起機能不全」「射精障害」といった症状が一生回復しないのです。治療方法も確立されておらず、バイアグラなどのED治療薬も効かなくなります。
生殖器に関する副作用が起こる確率的は、1~5%未満です。100人に1人~5人が発症する計算になります。この数字を多いとみるか、少ないとみるかは意見が別れると思いますが、子作りを考えている人にとっては無視できない確率だと思います。
口コミによる不妊報告と子供への影響(理由2)
プロペシアに含まれているフィナステリドは、わずかですが精子に移行します。このことは、プロペシアの添付文書にも記載されています。
精子移行(海外試験成績) | 男性型脱毛症患者にフィナステリド1mgを1日1回6週間経口投与した時の精液中への移行量は極めて微量 (投与量の0.00076%以下) であった。 |
精液に含まれる割合がわずかであることから、性行為や生まれてくる子供には影響がないとされています。しかし、2chなどの口コミサイトを見ると、関連性は不明としながらも影響が出たという投稿があります。
うちの兄貴の子はこの春自閉症と診断されたわ。
前の嫁のとの子も発達障害診断されてる。
奇形児ではなかったけど
5歳の子供が生まれてきたときに停留精巣だったので手術が必要だった。
服用してたプロペとの因果関係は不明。
てか会社のハゲの息子も胎児水腫で大変だったみたいだぞ
薬の影響とか分かんないから聞いたときはなんとも思わなかったが
奴もミノフィナの常習者だったから疑いたくなるな
子供が産まれたのですが精巣停留になりました・・・。
今度1歳で手術する事になりそうです。
これが原因かは分かりませんが、非常に後悔しています。
皆さんも今後子作りするなら飲まない方がいいよ。
服用してから第二子ができなくなり(稽留流産を3回)念のために服用をやめ、やめてから1年程度でようやく第二子を授かりました。関連性のほどはわかりませんが。
このように、流産をしたり、子供が障害をもって生まれたりしたという報告がされています。もちろん、報告数自体が少ないので問題ないと思うかもしれません。
しかし、何度も言うように、子供の一生に関わることです。低い確率かもしれませんが、その確率を引き当てた日には後悔してもしきれない状況になると思います。
フィナステリドの含有量が多い「プロスカー」では性行為そのものを禁止している(理由3)
プロペシアに含まれているフィナステリドという有効成分は、もともと前立腺肥大症の治療に用いられてきました。
日本では認可されていませんが、前立腺肥大症の治療薬として「プロスカー」という薬があります。プロスカーにはフィナステリドが5.0mgも含まれています。
同じフィナステリドが入っている薬ですが、プロスカーにはプロペシアにはない注意書きがあります。それが性行為の禁止です。プロスカーの注意書きには、性行為によってフィナステリドの暴露を避けて下さいと書かれているのです。
プロスカーについて
(前略)
妊娠中かその可能性のある女性は、プロスカーを服用している男性との性的接触により薬剤の暴露を受けないこと、パートナーが妊娠中かその可能性がある場合は薬剤が微量含まれる精液に暴露されないようにすること、妊娠中の女性がプロスカーの有効成分に触れてしまったときは医師に相談すること等が公表されています。
出典:厚生労働省HP
フィナステリドの含有量が違うため、注意書きの内容が異なるのは当然です。フィナステリドの含有量が少ないプロペシアでは、性行為までは禁止されていません。
しかし、口コミなどでは子供に障害が出ていると報告されていることから、まったく影響がないとはいえません。プロスカーより確率は低いかもしれませんが、プロペシアでも子供に影響が出る可能性があるのです。
以上のことから、プロペシアの成分であるフィナステリドには、子作りに影響する危険性が潜んでいます。万が一のことを考えると子作り中は服用しないことをオススメします。
断薬するなら最低1ヶ月は必要
すでにプロペシアを服用している場合、断薬期間をどのくらいおけば安心と言えるのでしょうか? これに関しては、輸血可能になる期間が参考になります。血液からフィナステリドが完全に抜ければ、精子へ移行することもありません。
日本赤十字社のHPによると、1ヶ月間は輸血が禁止となっています。これはフィナステリドが5.0mg配合されているプロスカーも同じです。したがって、断薬期間は少なくとも1ヶ月は必要となります。
妊娠後のプロペシアの取り扱いについて
プロペシアの服用を中止して、晴れて妊娠したとします。その際も、プロペシアの取り扱いには注意が必要です。フィナステリドは皮膚接触でも吸収され、男子胎児の生殖器に影響を与える危険性があるからです。
そのため、妊婦さんはフィナステリドとの接触を避けたほうがよいです。性行為をする可能性のある場合は、旦那さんも注意しましょう。もちろん、口から摂取してもいけません。
また、妊婦さんに対する薬の危険性をあらわすものとして、FDAの胎児危険度分類があります。
FDAとは「アメリカ食品医薬品局」といい、食品や薬の安全性を管理している政府機関です。FDAが胎児に対する薬の危険性を評価し、分類した基準が胎児危険度分類になります。
A、B、C、D、Xの5段階評価になっており、A<B<C<D<Xと危険度が高くなっていきます。
この5段階の中で、プロペシアは最も危険な「X」に分類されており、胎児奇形を発生させる危険性があります。そのため、妊婦さんや旦那さんはフィナステリドとの接触を極力避けるようにしましょう。
とはいえ、プロペシアの錠剤はコーティングされています。欠けていたり、割れていたりしない限りは、触っても問題ありません。また、処方された際にはPTPシートで包装されています。包装された状態で保管しておけばなんら問題はありません。
よほどいい加減な扱いをしない限り、錠剤を触って影響が出ることはないと思います。
ただ、女性が妊娠した場合は、妊婦さんの手に触れないように保管しておく必要があります。
まとめ:子作り中も薄毛対策をしたいなら
薬には必ずなにかしらの副作用があります。それはプロペシアも同様です。もちろん、国がきちんと認可しているため、副作用が起きる確率は低いです。
しかし、国によって認可された子宮頸がんワクチンでも重い副作用が発症し、人生が狂った人達がいることも忘れてはいけません。薬は副作用の危険性も考えながら使うことが大切です。
なにより、ポストフィナステリド症候群といった副作用は、治療方法が確立されていないので、発症してしまったらどうすることもできません。また、仮に妊娠できて子供が生まれたとしても、何らかの障害を背負って生まれてきた日には、後悔してもしきれないと思います。
「あの時に止めておけばよかった」と後悔しないためにも、できうる限りの対策をして子作りに励んだほうが良いでしょう。
そのため、現在プロペシアを服用している人は、子作り中だけでも服用を中止することをオススメします。また、子作り中にどうしても薄毛対策をしたいという人は、副作用のない育毛剤などで対策をするという方法もあります。
プロペシアの危険性を十分に考え、後悔のない選択をしましょう。