ケトコナゾールという成分は本来、脂漏性皮膚炎などの皮膚炎の治療に用いられています。しかし一方では、AGA(男性型脱毛症)に対しても効果があることが分かっています。実際に、日本皮膚科学会が発表しているAGAの診察、診療に関するガイドラインでは「用いても良い」という評価がされています。
効果としては、髪の毛の太さと成長期毛の割合の増加です。また、AGAの進行予防としてもオススメです。
このページでは、ケトコナゾールシャンプーのAGAに対する効果について解説していきます。また、私が体験した中で感じたケトコナゾールシャンプーを上手に使うコツについても解説していきます。
唯一AGAへの効果が実証されているシャンプー
AGA患者39名を対象に、ケトコナゾール(2%配合)シャンプーと市販のシャンプー(ヴィダルサスーンのシャンプー)の効果を比較した研究があります。この研究によって、ケトコナゾールシャンプーが髪の毛の太さと成長期毛の割合を増加させることが分かりました。
比較には髪の毛の太さと成長期毛の割合をかけ合わせた値(PI値)が使われました。
その結果、ケトコナゾールを使用していたグループは6ヶ月目以降にPI値が増加。その後15ヶ月目まで増加し続け、それ以降はPI値が維持されました。一方、市販のシャンプーはPI値が徐々に減少しています。AGAへの効果は無く、徐々に進行していくことが分かります。
■がケトコナゾールシャンプー、□が市販のシャンプーの推移
出典:Ketoconazole Shampoo: Effect of Long-Term Use in Androgenic Alopecia
以上の結果から、ケトコナゾールシャンプーには髪の毛の太さと成長期毛の割合が増加することが分かったのです。
「新しい髪の毛が生える」といった効果を期待した方はがっかりしたかもしれません。しかし、AGAの症状を考えると確かな効果があると言えます。
なぜなら、AGAによって発生するヘアサイクルの短縮と、髪の毛のミニチュア化を防いでいると言えるからです。
ヘアサイクルとは髪の毛が生えてから抜け落ちるまでの周期のことをいいます。ヘアサイクルには髪の毛が成長する(細胞分裂する)成長期。成長が衰える退行期。細胞分裂が完全に停止する休止期に分けられます。
出典:AGA-NEWS
AGAを発症すると髪の毛の成長が阻害され、成長期から休止期に移行するスピードが早まります。このような現象をヘアサイクルの短縮と言います。
ヘアサイクルの短縮がおこると、髪の毛の伸びる期間が減るので一本一本が短くなります。同時に、太さ方向にも成長しません。そのため、髪の毛が細く短くなるミニチュア化という現象も起こります。
ケトコナゾールシャンプーによる研究結果では、成長期毛の割合と髪の毛の太さが増加しました。
そのため、成長期毛の割合が増加するという結果は、成長期から休止期に移行する髪の毛が減少していることになり、ヘアサイクルの短縮を防止していると言えます。また、髪の毛が太くなるという結果は、髪の毛が細くなるミニチュア化を防いでいると言えるのです。
脂漏性皮膚炎を予防することがAGAの予防にもつながる
脂漏性皮膚炎は、皮膚が赤く炎症し痒みを伴ったり、大量のフケが出たりする病気です。一見、AGAとは症状が違うため関係がないように思えます。しかし、脂漏性皮膚炎などによってフケが多くなることはAGAを発症している人にとって良くありません。
なぜなら、フケが多いとAGAの進行が早まるからです。
フケとAGAの関連性は、一卵性双生児のAGA患者を対象にした研究によって判明しています。
一卵性双生児とは遺伝子的に全く同じ双子のことを言います。遺伝子的に全く同じでありながら、双子の間にはAGAの進行状況に差がありました。そのため、AGAの進行に影響する原因は何なのか、遺伝子以外の外部的要因が調べられました。
その結果、AGAの進行が早い方にはフケも多いことがわかったのです。
また、フケが大量に発生すると毛穴をふさぎ髪の毛の成長が阻害されるため、粃糠性脱毛(ひこうせい脱毛)という脱毛も発生します。
そのため、脂漏性皮膚炎を予防することはAGAを発症している人にとって大切なのです。
その点、ケトコナゾールシャンプーは脂漏性皮膚炎の予防にも効果的です。シャンプーは頭皮全体をケアできるため、本人が気づかない小さな炎症にも働きかけることができます。
ケトコナゾールには治療に用いられるローションタイプもあります。しかし、そちらは炎症している患部にピンポイントで塗る分には良いのですが、頭皮全体をケアするのには向いていません。そのため、広範囲をケアできるシャンプーが薄毛対策に向いています。
ケトコナゾールシャンプーの副作用
ケトコナゾールは脂漏性皮膚炎などの治療に用いられる成分です。そのため、副作用を気にする方もいると思います。
しかし、ケトコナゾールシャンプーのような外用薬に強い副作用はありません。市販のシャンプーを使う際に気をつけるようなことに注意すればいいだけです。
例えば、市販のシャンプーでも痒みや湿疹、ヒリヒリとした刺激感が出て合わないといったことがあります。
ケトコナゾールシャンプーも同じようなことを気をつければ問題ありません。ただ、人によってはどうしても合わない場合があると思います。そんな時は、シャンプーの使用を中止すれば痒みなどの症状も無くなります。その点も市販のシャンプーと同じです。
以上のように、副作用に強いものはありません。安全性が高いため、使ってみてから自分に合う合わないを判断しても問題ありません。
ケトコナゾールシャンプーの使い方のコツ
ケトコナゾールシャンプーは基本的に、毎日使うシャンプーではありません。メーカーによってまちまちですが、週に1〜3回くらいの使用が推奨されています。また、シャンプーのさいには3分~5分ほど頭皮になじませてから洗い流します。
ただ、上記で示したような使い方にこだわる必要はありません。こんな言い方をしたら元も子もないかもしれませんが、ケトコナゾールシャンプーを使うコツは自分の頭皮の状態に合わせて使う頻度、馴染ませる時間を調整することです。
私も始めの頃は、3日に一回の頻度で使い、頭皮に馴染ませる時間は3分くらいにしていました。しかし、私の場合は痒みが強くなったように感じました。
脂漏性皮膚炎を発症していたこともあり、三日に一回の頻度だと痒みを抑えきれないのかなと感じました。そのため、使う頻度を増やし二日に一回に変更。頭皮に馴染ませる時間は使う頻度が増えたので、3分から1分に短くしました。
そうしたところ、しだいに痒みも気にならなくなり快適に使えるようになったのです。
また、今では脂漏性皮膚炎が改善されたので、使用頻度を伸ばしています。頭皮の状態に合わせて三日に一回で使ったり、四日に一回のペースで使ったりしています。
以上のように、自分にあった使用頻度を見つけることがケトコナゾールシャンプーを使うコツになります。
頭皮の状態は人それぞれ違います。そのため、シャンプーを使った際の反応も違ってきます。人によっては毎日使っても良いでしょうし、頭皮に馴染ませる時間を長くしても良いと思います。頭皮の湿疹や炎症の度合いを考えて自分で調整していくのがベストです。
私自身、購入したボトル一本は使い切ってみようと思い試行錯誤しました。その結果、自分に合った使用頻度を見つけることができたのです。
副作用が出てどうしても合わない場合はすぐにでも止めるべきですが、そうでない人はボトル一本を使い切る中で調整していき、使うか使わないかの判断をしても遅くはありません。
使い続けて感じた効果
上記のように、自分に合った頻度でシャンプーを使い続けた結果、さまざまな効果を感じることができました。
その一つがフケの減少です。私は脂漏性皮膚炎だったこともあり、大量のフケが出ていました。頭を掻けば肩や服にフケが落ちるのは当たり前。頭を少し掻いただけでも爪の間にびっしりとこびり付くくらいフケがありました。
そんな大量のフケは大幅に減少し、脂漏性皮膚炎を発症していなかった頃の健康なレベルに戻ったのです。湿り気をおびていたフケはサラサラになり、頭を掻いてもほとんど付かなくなるまでに変化しました。また、大量のフケが発していた油っぽい臭いもなくなりました。
次に感じた効果は、シャンプーをした際の抜け毛の減少です。以前であれば、髪を洗った際に多くの抜け毛が発生していました。洗う度に洗面器の中には、黒い束となって見えるくらい抜け毛が出ていました。
そんな抜け毛が大幅に改善されました。体感としては1/10位にまで減少しています。洗面器に黒い束となって浮かんでいた抜け毛がなくなり、ぱらぱらとしか見えない位までに変化したのです。
その他にも、湿疹や炎症による痒みの減少と、頭皮の色の変化を実感しています。脂漏性皮膚炎を発症していたときは常に頭皮が赤く、どこかしらが痒い状態でした。頭を掻かない日はなく、ひどい時には頭を掻きすぎて血が出るほどに。それがシャンプーを使っていく内に痒みが減少していき、一日を通して全く掻かない日が出るほどまでになったのです。
また、湿疹や炎症が減少していったため、赤かった頭皮は健康な頭皮の色である青白い色に変化していきました。この変化は自分が実感しただけでなく、いきつけの美容師からも「頭皮がキレイになったね」と言われるまでに変化したのです。美容師は自分より頭皮を間近で見れる存在です。そんな人から頭皮を褒められたことは非常に嬉しい出来事でした。
以上のように、ケトコナゾールシャンプーを使い続けた結果、さまざまな効果を体感することができました。年々進んでいたAGAの症状も、シャンプーによって脂漏性皮膚炎が改善されてからはピタリと止まっています。脂漏性皮膚炎からくる痒みのストレスも消えたため、今ではケトコナゾールシャンプーが手放せなくなっています。
まとめ:育毛剤など他の対策と合わせて取り入れることをオススメ
以上のようにケトコナゾールシャンプーには成長毛の割合と髪の毛の太さの増加が期待できます。また、AGAを加速させる原因となる脂漏性皮膚炎の予防にも使えます。
ケトコナゾールシャンプーは副作用が弱く、使用を中止すれば症状も消えるため、気軽に試すことができます。何より、AGAに対する効果が実証されている唯一のシャンプーです。
また、シャンプーという習慣に組み込めばいいだけなので、無理なく続けやすい点もメリットです。育毛剤など他の対策と合わせて取り入れることをオススメします。