薄毛のことが気になりだすと、日々抜け落ちる髪の毛に敏感になります。シャンプーをしたときの抜け毛や、枕についている抜け毛を見て憂鬱になるかもしれません。また、抜け毛を見てAGA(男性型脱毛症)を判断できないかと疑問に思うこともあるかもしれません。
しかし、実際は抜け毛を見てAGAを判断するのは難しいことです。なにより、正確な判断をしようとすると、ある程度の本数が必要になりますし手間がかかります。
ただ、ポイントを理解すれば自分でも判断できるようになります。そこでこのページでは、AGAの抜け毛の特徴とセルフチェック方法について解説していきます。
抜け毛の本数(特徴1)
AGAを発症した人の抜け毛の本数を知るためには、健康な人の抜け毛の本数を知っておく必要があります。健康な人より抜け毛の本数が多ければ、AGAを発症している可能性があります。
1日あたりの抜け毛の本数は、以下の計算式で求めることができます。
ヘアサイクルとは、髪の毛が生えてから抜け落ちるまでのサイクルをいいます。健康な髪の毛のヘアサイクルは2年~5年なのに対し、AGAを発症した髪の毛は1年~数ヶ月に短縮されます。
また、髪の毛の総数は人それぞれ違います。少ない人では6~7万本、多い人だと13~14万本です。そのため、平均的な髪の毛の総数は10万本となります。
髪の毛の総数とヘアサイクルから算出される抜け毛の本数は以下になります。
ヘアサイクル年数/髪の毛の総数 | 6万本 | 10万本 | 14万本 |
5年(1825日) | 33本 | 55本 | 77本 |
4年(1460日) | 41本 | 68本 | 96本 |
3年(1095日) | 55本 | 91本 | 128本 |
2年(730日) | 82本 | 137本 | 192本 |
1年(365日) | 164本 | 274本 | 384本 |
髪の毛が少ない場合(6万本)、平均的な場合(10万本)、多い場合(14万本)の3パターンで計算しました。
この表を利用すれば、一日の抜け毛の本数とヘアサイクル年数の関係がある程度わかります。例えば、抜け毛の本数が82本〜192本の範囲内であれば、ヘアサイクルはだいたい2年と判断できます。健康な髪の毛のヘアサイクルは2年以上なので、一日の抜け毛が150本以上になってくると危険信号と言えます。
ただし、抜け毛の本数だけでAGAを判断することはできません。抜け毛はヘアサイクルの短縮だけでなく、病気やストレス、生活習慣など、さまざまな要因によっておこるからです。個々人の環境や体の状態によって抜け毛の本数は変化します。そのため、抜け毛の本数だけでAGAか否かを決めつけることはできません。
なにより、1日の抜け毛の本数を正確に数えることは難しいことです。抜け毛でAGAを見極めるには、抜け毛の本数だけでなく抜け毛の質にも注目する必要があります。
抜け毛の長さ(特徴2)
ヘアサイクルの短縮は、抜け毛の増加だけでなく抜け毛の長さにも影響します。ヘアサイクルが短縮される分髪の毛が伸びる時間も短いため、おのずと抜け毛の長さも短くなるのです。
髪の毛が伸びるスピードは栄養状態や季節、年齢によっても変わってきますが、平均的に1日0.3mm~0.4mm伸びるといわれています。
健康な人のヘアサイクル(2年)で計算してみると、21.8cm~29.1cm伸びることになります。そのため、21.8cm以下の抜け毛が多いとAGAを発症している可能性があります。
とはいえ、散髪をして髪の毛を切ってしまうと、どれだけ成長した髪の毛なのか分からなくなります。また、20cm以上も髪の毛を伸ばしている男性は少ないと思います。
そのため、AGAによる抜け毛なのかを判断するためには、毛先にも注目する必要があります。
通常、髪の毛の毛先は尖っています。これが散髪などによって切られると、尖った毛先がなくなり角ばった形になります。したがって、毛先が尖っていて短い抜け毛がどれだけあるかが重要な判断ポイントになります。
つまり、AGAによる抜け毛は、長さはが21.8cm以下で毛先が尖っていることが特徴となります。
尖っている毛先
散髪により切られて角ばっている毛先
抜け毛の太さ(特徴3)
ヘアサイクルの短縮によっておこる変化は、髪の毛の太さにも影響してきます。AGAを発症した髪の毛は、成長が抑制されるため太く育ちません。そのため、髪の毛は細く軟毛化します。抜け毛にも、細い髪の毛が目立つようになります。
ダーモスコープ(頭皮や髪の毛、毛穴を10〜30倍に拡大して観察できる特殊なルーペ)を使った検査によると、AGAを発症した人では20%以上の軟毛化が見られます。そのため、抜け毛に含まれる軟毛の割合も20%以上になると、AGAを発症している可能性があります。
軟毛化しているか否かの判断は、抜け毛全体を見比べて行います。日本人の平均的な髪の毛の太さは0.08~0.09mmとされています。しかし、細い人では0.05mm、太い人では0.15mmくらいあります。髪の毛の太さは人それぞれ違いがあるため、「AGAを発症した髪の毛は◯mm」といった基準はありません。
そのため、自分の抜け毛全体を見比べて判断するしかないのです。
左が軟毛化した抜け毛、右がカットされた太い抜け毛
以上がAGAを判断するための抜け毛の特徴です。AGAを発症すると、髪の毛の本数、長さ、太さに影響が出てきます。ただ、どの基準も今ひとつ明確でないため、判断が難しいと思います。
また、ここまで読んできて「毛根の基準はないのか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
実は毛根によってAGAを見極めることはできません。そこで次の項目では、毛根の種類や見分けられない理由について解説していきます。
毛根によってAGAを判断することはできない
毛根の種類は、大きく分けて2つしかありません。また、AGAによる抜け毛の毛根は、通常のヘアサイクルによる抜け毛と同じです。そのため、毛根によってAGAを判断することはできないのです。
毛根の種類
抜け毛の毛根は、2種類のパターンが存在します。成長期性と休止期性です。
成長期性の毛根は、主に円形脱毛症を発症した髪の毛におこります。下の写真のように、毛根部分が膨らんでいない先細りした毛根になります。成長期性の髪の毛は、何らかの要因で成長が阻害され、毛根が萎縮して抜け落ちます。
そのため、毛根が無いように見えたり、黒くて細く見えたりします。このような毛根の抜け毛を萎縮毛といいます。ただし、健康な人の抜け毛にも1割くらいは含まれます。
休止期性は、ヘアサイクルが終了した際に起こる抜け毛です。毛根が膨らんでおり、棍棒の形に似ていることから棍毛と呼ばれています。また、同じ休止期性でも毛根部分が白い場合もあります。白くなる理由は、ヘアサイクルが終了する際に髪の毛に色を与えるメラニン色素の供給が途絶えるためです。
AGAの抜け毛は休止期性の棍毛
AGAの抜け毛はヘアサイクルが短縮されることで抜けるため、休止期性の棍毛に属します。そのため、AGAによる抜け毛の毛根は、通常のヘアサイクルの終了による抜け毛となんら変わりがないのです。
そのため、毛根に注目しても意味はありません。抜け毛の太さや長さに注目して判断するしかないのです。ただ、抜け毛の毛根を確認することで、AGAや通常のヘアサイクルによる抜け毛なのか、円形脱毛症などの他の要因による抜け毛なのかを見分けることに役立ちます。
セルフチェック方法
以上の特徴を踏まえて、抜け毛によるAGAの判定基準をまとめるとこのようになります。
●髪の長さ:21.8cm以下。毛先が尖っていて短い抜け毛であること
●髪の毛の太さ:抜け毛全体で比較したとき、細い抜け毛が2割以上含まれていること
●棍毛であること
大事なポイントは、抜け毛全体を見て短いか、細いかを判断することです。人それぞれ髪の毛の太さが違います。ヘアスタイルによって髪の長さも違います。そのため、抜け毛全体で比較する必要があります。
また、この基準に照らし合わせてAGAの判断をするには、ある程度の量が必要です。より正確に判断するには100本程度必要になります。
採取方法
では、どのように抜け毛を採取すればいいのか? オススメはシャンプーをした際の抜け毛を採取することです。一人暮らしや自分の部屋など他人が出入りしないのであれば、部屋に落ちている抜け毛でもよさそうに思うかもしれません。
しかし、それだと目立ちやすい太く健康な抜け毛を多く採取してしまい、細く短い抜け毛は見落としがちになります。すると、細い抜け毛や短い抜け毛の割合が変化し、正確な判断ができなくなります。そのため、抜け毛を根こそぎ集めることができるシャンプー時に採取することをオススメします。
採取方法は以下の手順になります。
ステップ2 バスマットなど髪の毛が引っ掛かるものをどかす
ステップ3 排水口にガーゼやネットなどをセットする
ステップ4 シャンプーする
一人暮らしであれば、この方法で採取することが可能でしょう。ただ、家族と一緒に住んでいる場合は難しいと思います。そこで、もう少し簡易的な方法も紹介します。
用意するものは、バスケット、洗濯ネット、輪ゴムやクリップです。
バスケット、洗濯ネット、ピンセットです。ピンセットは無くてもいいです。(全て100円ショップで揃えました)
輪ゴムで洗濯ネットをバスケットに取り付けるとこんな感じになります。ここに髪の毛を集めます
バスケットに洗濯ネットを張り、輪ゴムでとめます。そこに髪の毛が入るようにシャワーを浴びながら洗髪する方法になります。ポイントはバスケットを広めなものにすることです。面積が小さければ取り逃す抜け毛が出てきてしまうからです。
このような方法で抜け毛を採取し、基準に照らし合わせて判断していきます。
こちらがシャンプーで集まった抜け毛の写真です。
長い毛から細い毛、短い毛まできちんととれています。
今回のシャンプーで集まった抜け毛の数は35本です。
毛先が尖っていて細い抜け毛は7本でした。比率にすると20%の割合です。
結果は、抜け毛の本数が35本。軟毛化した抜け毛が7本で、比率にすると20%でした。また、私は髪を短くしているため、一番長い抜け毛でも8cmほどしかありませんでした。今回は100本に満たない数なので暫定的な判断になりますが、より正確性を期すにはもう1回~2回抜け毛を集めて判定する必要があります。
抜け毛に神経質になるくらいなら対策に目を向けよう
以上のようにAGAの抜け毛の特徴はあいまいな部分があり、判定が難しいです。採取するのも手間がかかり、面倒です。また、使っているシャンプーや洗髪方法、生活習慣などによって1日の抜け毛の量は変わってきます。
そのため、抜け毛でAGAを判断するよりも、髪の毛に違和感を感じたら早めに対策することをオススメします。AGAによる髪の毛の変化は抜け毛だけではありません。寝癖の減少やボリュームがなくなるなど、他のサインとして表れることもあります。
なにより、抜け毛に神経質になりストレスになってしまっては髪の毛にもよくありません。髪の毛の変化を総合的に見て、いかに対策できるかに目を向けていきましょう。