抜け毛が増えたり、つむじやおでこの生え際が薄くなってきたりしたことを自覚しはじめると、薄毛の基準について気になってくると思います。また、「自分はまだ大丈夫」と思いたい一方で、自分の薄毛はどんなレベルで、医療機関に行くべきなのか悩んでしまうこともあると思います。
ただ実際のところは、AGA(男性型脱毛症)を判断するための明確な基準は多くありません。そこで、このページでは薄毛の基準にはどんなものがあるのかを解説していきます。
AGAの診断基準
AGAを診断するさいの基準となるものが存在します。それがハミルトン・ノーウッド分類です。この分類を使い、脱毛がどのくらい進行しているかを判断します。
ハミルトン・ノーウッド分類は、欧米で考案されました。この分類が日本でも使われるようになったのですが、日本人の薄毛にはハミルトン・ノーウッド分類に当てはまらないパターンも存在しました。そのパターンとは、前頭部(おでこ)が薄くなるより先に、頭頂部(頭のてっぺん、つむじ付近)が薄くなることです。この特徴はアジア系の人種に多い傾向があります。
ハミルトン・ノーウッド分類に、頭頂部が先に薄くなる特徴を加えたのが高島巌という医師です。高島医師の名前をとって「高島分類」といわれています。日本ではハミルトン・ノーウッド分類に高島分類を加えたものが診断基準の主流になっています。
私の髪の毛もこれらの分類に当てはめて確認してみました。私の薄毛は前頭部から進行しています。また、悲しいことに頭頂部も薄くなってきているので、Ⅳに当てはまりそうです。ハミルトン・ノーウッド分類・高島分類で見ると、薄毛の進行は中期の段階だということが分かります。
このように、イラストと実際の頭髪の状況を見比べて進行状況を判断します。AGAの診断というのは基本的に「見た目」で判断されます。実際に、私が医療機関に行ったさいも、特別な診察をされるわけでもなくAGAと判断されました。
私のように薄毛が進行している人の頭髪であれば、診断を下すにもそう迷うことはないかもしれません。しかし、初期段階のAGAでは、判断に迷いが出る可能性があります。そのため、ハミルトン・ノーウッド分類には、AGAの人とそうでない人を分ける明確な基準があります。
どこからが薄毛? AGAのはじまり
ハミルトン・ノーウッド分類には、上記で説明したイラストの分類だけでなく、AGAの人とそうでない人を分ける明確な基準が存在します。それが前頭部の薄毛の基準です。
頭を横から見たとき、耳の穴から頭の頂上を結んだライン(以後、頭頂線と呼ぶ)と生え際の距離によってAGAか否かを判断します。頭頂線と生え際の距離が2㎝より少ない場合、AGAと判断されます。
私も実際に測定してみました。なかなか正確に測ることが難しく、試行錯誤しながら数回測ってみたところ、4cm~5cmくらいの距離だということがわかりました。前頭部の基準に照らし合わせれば、私まだAGAと言えないことになります。しかし、実際には十分薄毛が進行しており、AGAと認識しています。
この結果からいえるのは、2cmという基準は誰が見てもAGAと判断できるレベルだということです。診断を下すための基準ですから間違いがあってはいけません。そのため、このような厳しい基準になったのだということが伺えます。
発毛を諦める限界ラインは?
ハミルトン・ノーウッド分類にはⅠ~Ⅶまで、段階的に薄毛の状態を分けています。では、どの段階までなら手遅れにならずに治療できるのでしょうか? その目安となる基準が「毛髪科学の最前線」に書かれています。
一般的な治療プランとして、フィナステリドの使用を考えるのは、ハミルトンノーウッドの分類のうちⅡからⅤまでの症状で、Ⅴの人はミノキシジルを併用すると良いかもしれません。そこからさらに進行したⅤa、Ⅵ、Ⅶの方には植毛術などほかの方法をおすすめしたいところです。
このようにⅤ以上に薄毛が進んでしまうと、代表的な薄毛治療薬であるフィナステリドでは回復が難しいとされています。具体的には、下記のウィリアム王子の写真のように、前頭部と頭頂部の薄毛がつながってしまっているような状態だと、フィナステリドなどの治療薬による回復が難しくなってきます。
出典(http://media.image.infoseek.co.jp/)
また、治療薬による回復は高齢になるほど難しくなります。フィナステリドの臨床試験によると、より高齢になったほうが回復しづらいという結果が出ています。そのため、より早い年齢、より早い段階での対策が大切になります。
側頭部、後頭部が薄毛の場合はAGA以外の可能性がある
頭頂部やつむじの薄毛の基準
次に、部位別の基準の話になります。ハミルトン・ノーウッド分類では、前頭部の生え際の基準は存在しました。しかし、ハミルトン・ノーウッド分類にしろ高島分類にしろ、頭頂部の明確な基準は存在しません。
急激な脱毛でもないかぎり、徐々に頭頂部が薄くなる症状そのものがAGAといえます。そのため、周りの髪の毛と比べて頭頂部だけが軟毛化して薄くなってきたときはAGAと思って対策しましょう。
側頭部・後頭部の薄毛の基準
側頭部、後頭部の基準も、残念ながらAGAには存在しません。そもそもAGAは前頭部から頭頂部にかけて脱毛する症状です。ハミルトン・ノーウッド分類と高島分類を見てもわかるとおり、AGAの症状が進んだ状態でも側頭部と後頭部は残ります。そのため、AGAには側頭部や後頭部の基準が存在しないのです。しかし、側頭部や後頭部に薄毛の症状がある場合は、別の脱毛症の可能性があります。それが円形脱毛症です。
円形脱毛症は「10円ハゲ」と称されるように、円形の脱毛が起こると思われがちですが、他にもさまざまなパターンが存在します。その一つに蛇行性の円形脱毛症があります。蛇行性の円形脱毛症は、首筋やおでこ、耳周りの生え際を中心に脱毛します。側頭部や後頭部にこのような症状がある場合は、AGAではなく円形脱毛症の疑いがあります。
より早く薄毛に気づくために
以上のように、AGAの明確な基準というのは意外に少ないものです。また、前頭部の基準に達したらAGAと判断されていますが、薄毛を気にしている本人としては、そこに到達する前に薄毛だと認識しているはずです。そのため、ハミルトン・ノーウッド分類の基準は絶対視することなく、薄毛の変化に気づきだしたら対策を始めるべきです。
その変化として上げられるのが、「髪質の変化」と「細く短い抜け毛」になります。
個人差はありますが、男性は思春期になるとホルモンの影響で髪の毛が硬くなります。しかし、AGAを発症するとヘアサイクルが短縮され、髪の成長が途中で止まったり、成長しきれないまま抜け落ちたりすることが多くなります。
そのため、成長しきれない髪の毛は柔らかいままで止まり、硬い髪質から柔らかい髪質へと変化します。その過程で成長しきれない髪の毛も抜けるため「細く短い抜け毛」も多くなります。
これらの変化によっておこる症状の一つが「寝癖の減少」です。髪質が軟毛化することで寝癖も付きにくくなります。私も中学時代はしょっちゅう寝癖がおこり、毎日のヘアセットに時間をかけていました。
しかし、高校、社会人と年齢を重ねるにしたがって寝癖がなくなっていきました。寝癖がなくなった当初は、ヘアセットに時間がかからなくなってラッキーと軽く考えていました。しかし、それは髪質が柔らかく変化したことによっておこる現象であり、AGAが進行しているシグナルなのです。
このような変化があれば、AGAを発症している可能性が高いです。ハミルトン・ノーウッド分類や高島分類の基準を絶対視することなく、薄毛対策をしていきましょう。